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2005年5月公開映画 タナカヒロシのすべて
2005年3月31日(渋谷シネマソサエティ)映画「moog」トークショー&ミニライブにてハンスフェルスタッド監督、プロデューサー・ライアンペイジからのメッセージを伝えた井伊英理が「テルミンと俳句の会」の謎にせまり田中誠監督にインタビュー。
監督は1960年生まれ、浅草育ちの映像ディレクター。タナカヒロシのすべては第一回作品となります。
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テルミンとタナカヒロシの出会い
e(ERI):なぜテルミンだったのでしょうか?
m(監督):もともとのシナリオでは俳句だけの会だったんです。
プロデューサーから俳句だけだと『画』になりにくいと言われて色々考えて思いついたのが「盆栽と俳句の合体団体」。
テーブルを取り囲んで盆栽をめでながら俳句を読むという会。
それも、動きがないなぁと思っていたところ、突然ひらめいたのが「テルミンと俳句の会」というフレーズ。
名前先にありきで、プロデューサーが聞いた途端に「なんじゃそりゃ!」と大爆笑。
e:初めてテルミンを見たのはいつですか?
m:映画の撮影が2002年の冬だったから、2002年の夏だったかな。
ヒカシューの巻上公一さんのライブで初めて見ました。
そのステージでテルミンが登場したのは、たまたまだったんだろうけど。
テルミン自体はインターネットで見つけたソフトウエアのバーチャル・テルミンが先です。
e:バーチャル・テルミンはいかがでしたか?
m:一晩中やってました。
マウスであっちやったり、こっちやったり。これは、はまりました。

e:夜中にテルミンで音を出してて周りの人、変に思われませんでしたか?
m:一人暮らしだし。PowerBookのスピーカーだし。
でも、客観的に見るとすごく気持ち悪いよね。
家で誰にも聞かせるわけでもなく、一人でずーとやっていた。一人遊びでしたね。
テルミンの存在についてはもうその時には知識があったのだけど、どうして知っていたのだろう。憶えていないや。
e:レッドツェッペリンやビーチボーイズを聴いていた?
m:スティービーワンダーは好きだけど、ツェッペリンやビーチボーイズをコアに聴いてたわけじゃないから。
でもなんとなく知ってた。
なので、テルミンをライブで見た時にもそんなに驚きは感じなかった。
でも、ロシアで生まれたというのは今、始めて聞いて知って驚いた。
巻上さんは口琴やホーミーと一緒に演奏するわけだけど、楽曲ではなくて「ハプニング芸術的」な使い方をしていて、手をかざしながらテルミンの音を出してました。
e:映画テルミンはご覧になりましたか?
m:テルミンは見てません。
e:始めて音を聞いたときの印象はありますか?
気持ち悪かったとか、不思議だとか。
m:テルミン効果音が出てくる映画は良く知っていて・・・懐かしい50年代の世界観、スペーシーSFXは大好きなのでDVDも持ってます。
もちろんシンセサイザーが当時はなかったと思うので、当然、テルミンのような楽器を使用していたのですよね。その後、メロトロン・・・これはテープをループさせて、そこに録音した音を再生するキーボード・・・シンセサイザーやサンプラーの原型みたいなものにも、とても興味を持ってました。
懐かしいSF世界だったり、レトロなアナログ感がとてもよかった。
e:音程とか音階がちゃんと出る事もご存知なかったそうですね
m:そう、全然知らなかった。テルミンがmoogつながりという事も知らなかった。
moogのサウンドは大好きです。
昔のシンセサイザーは今と違って、楽器のシミュレーションじゃなかったから。
オリジナルなサウンドがあってそこで勝負してたでしょう。
「インナーヴィジョンズ(1973年)」「ファースト・フィナーレ(1974年)」スティービーワンダーは僕が最初に買った洋楽でもあるんだけど、ミュージックビデオにはmoogシンセサイザーがいっぱいあって、スティービーの隣にはオペレーターがついていて、とにかく演奏がカッコよかった。
モノシンセがとても印象的だった。
e:moog博士がテルミンを一般的に実用化販売して、それから発展したものがシンセサイザーに続くのです。
これが先日公開された映画「moog」で詳しく語られています。
m:テルミンがmoogから発売されている事も知らなくて、ほんと驚きました。
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苦労したレコーディング?
e:テルミンはどうやって調達したのですか?
(その場にあるERIのEtherwaveを見て)
m:映画の中で出てきたテルミンってこれだったっけ?
e:おなじものですよ
m:こんなに木目が入っていましたっけ?もっとプラスティックっぽいイメージ
(カタログの写真見ながら)
あ、ほんとだ。・・・同じだね。
これは美術の方が持ってきてくれたので、買ったものか、映画のスタッフの誰かの所有物なのかわからない。
僕は映画を見ていないけれど、美術スタッフは見てると思います。
e:予告編を見ても、良い音してますよね。
ヒュイ〜ンとかお化けっぽくと考えて弾いたのですか?

m:もちろん現場で芝居をやりながら音を出すという事はやらなくて、後で効果音を入れる作業をしています。
最初は音楽担当の白井良明さんがギターのエフェクターにアンテナがついたテルミンを持ってきて録音したのだけど、うまくいかなかった。
で、次にパワーブックのソフトウェア・テルミンで僕がやってみせたら、白井さんが『こっちの方がいいね』という事になって。
実際に演奏するのもこちらの方がやりやすかったみたい。
白井さんがマウスを使って、いくつかの音を録音したというのが実は種あかしです。
テルミンの音は何ヶ所か出てくるんだけど、僕はもっとSFXぽくしたくて一部、自分でやり直してみたりしました。
予告編ででてくる部分が確かそう。
e:映画の小道具だと適当にあしらわれちゃいそうですが、テルミンもスタンドもアンプもちゃんとセッティングされているので感心しました。
m:テルミンの事をよくご存知の方が映画をご覧になると突っ込まれそうですよね。
演奏ポーズをする役者さんは、実際にテルミンのことはご存知ないと思うのですが、とてもいい感じが出ています。
e:絵図らでは立ち位置とか「音、これだと出ないんだよね」ってわかる人もいると思うのですけど、でも、それ以上に、ものすごく型になっていて、視覚的にうまく収まっているのと、これまで、ドキュメンタリー映画やSF映画で起用されたりしましたが、「This is Theremin だぞ!」と強く主張しないところが、とても良かったと思います。
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テルミンと俳句の会
e:伊武雅刀さんはいかがでした?
m:テルミンも、そこから出てくるサウンドも知っていた感じでした。
e:スネークマンショーでYMOと共演していますので、シンセサイザー周辺事情はご存知かも知れませんね。
細野晴臣さんテルミンは持っていらっしゃるという事ですしね。
伊武さんは先にもう出演は決まっていたのですか?
m:いえ、シナリオができてから起用という順番です。
e:はまりすぎですよね。パーフェクトなリアリティ。
m:予告編をつくったディレクターもはまったと思う。
「テルミンと俳句の会」の部分も強調されているし、ここ以外でも同じようなレベルのビックリする仕掛けは他にも沢山あるけど、予告編を見てはまっちゃった人も大勢いると思う。
e:鳥肌ファンとテルミンファンの共通的な人も結構多いみたいです。
m:共通する部分はあると思う。サブカルチャー的な部分を押し出す場面になっている。自分として無理なこじつけをしていないし、自分の好みをストーリーの中で全部チョイスしている。
e:鳥肌さんと伊武さん、ご本人同士もまた、共通するところがあると思います。
スネークマンショーはご存知ですよね?
m:もちろん、リアルタイムでスネークマンショーは聞いてました。
いろいろな偶然が重なって、このシーンができているのです。
e:鳥肌実さんはいかがでしたか?変な音とか思ってたんでしょうかね?
m:何の不思議さも無く、多分、鳥肌さんも市川実和子さんも知っているんじゃないかな。撮影中は誰かが、特別に興味を持つという事も無く、あまりに自然に過ぎ去ってゆきました。
e:「テルミンと俳句の会」の背景について教えてください。
m:タナカヒロシの住んでいる所は郊外住宅地。アメリカでいうサヴァービア地域と言われる所。
映画の舞台である実在する地域がそうだ、と言うつもりはありませんが、一般的に郊外住宅地には伝統的な文化が根付きにくいと思います。
そこを映画の中で出したかった。
俳句なんだけど変な人たちが集まるグループが存在する。でも宗教団体じゃない。ダンスでもヨガでもなくて日本的文化が発展して、ちょこっと変になっちゃったと、わかるものとして俳句の文化がそこにあったんです。
e:実在の世界では「オシャレな俳句サークル」はたくさんありますが、映画の世界観だと、句を読んでいて変、エロッぽかったり、危なかったり大丈夫?という俳句が読まれています。
しかも季語がある本当の俳句、川柳じゃないところが良いですよね。
m:そう、それに加えて不思議さのアイテムとして延長線上にテルミンがある。
e:この行き過ぎちゃった俳句の会は誰の発案なのですか?
m:映画の中ではサイドストーリーめいたものは無いのだけど・・・。こんな感じです。
伊武さん演じるこの「テルミンと俳句の会」の先生は、以前、どこか別の俳句の会に所属していた。
自分の俳句の流派をつくろうとしていた所に、あのテルミンを弾いている女性が現れて進言したのかもしれない。
先生が「テルミン いいねぇー」で、テルミンを弾いている女性は俳句を読まない。という設定。
e:「テルミンと俳句の会」の女の子はいかがですか?
m:市川さんの演じている「テルミンと俳句の会の女の子」も変な人。
今時、ファッションも変、ベレー帽かぶって20歳半ばなのにサクランボのブローチをつけている。
実はモデルがあって、昔、新宿西口にずっと、つっ立っていて詩集を売っている女の子がいた。
「あいつ、だれなの?」って興味があって、その人のファッションを憶えていた。
ベストに、膝丈スカート、ペッタンコの革靴、ベレー帽、首から袋ぶら下げてた。
変わった感じを重ねて、市川さんの衣装が決まりました。
e:その人たちが句を発表すると、テルミンで合の手を入れたり、喉自慢のご褒美のようなカネの変わりにヒュイーンとやるのですか?
m:あまり深く考えてないけどね。
先生は何かというとすぐに拍手!という人なので、励ますために誉めあおう!景気づけに「ぴよよよよ〜ん♪」という感じ。
ミスマッチなものを組み合わせてマッチさせるのと、近代的ではないものを融合させてみた。
俳句の会のシーンは3回あって、そのうち2回テルミンが登場しますよ。
e:監督は、いつもアンテナをあっちこっちに張り巡らして、存在しないシチュエーションも現実にしてしまう力があるのですね。
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インタビューを終えて ERI
ひょうたんからこまのテルミン
田中誠監督は劇中の音楽に、とても気を配っています。映画のイントロのコーヒールンバは、こだわりのサウンドだとおっしゃっています。
実はテルミンのシーンはストーリーを引立たせるために、さりげなく登場させたところ、予告編を出したとたん予想外にも、テルミンに反応する人が多くて驚かれたそうです。
田中誠監督がピュアな気持ちでこの楽器を使ってくれた事、私はとてもうれしく思います。映画の中では「テルミンと俳句の会の女の子」だけでなく「看護婦さん」「お弁当屋さん」「田中ミヤコ」が登場します。またテルミン以外にもビックリする仕掛けがたくさんあります。このレポートはテルミンの話題を中心にお届けいたしましたが、ストーリーをぜひ楽しんでください。
日本で、初めてテルミンが登場する映画が誕生した歴史的瞬間。渋谷の街に鳥肌実さん、伊武雅刀さんとテルミンの大きな看板にビックリします。そして映画「タナカヒロシのすべて」は電子楽器の歴史にも残る作品になりました。この映画に遭遇できてとてもハッピーです。
2005年4月20日 渋谷PARCO PART3にて
(C)2005 Eri, M.Makoto
(C)2004/2005 photo:タナカヒロシのすべて製作委員会
最終更新5月11日
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